甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの不足によって引き起こされる疾患で、高齢の犬に多くみられます。甲状腺ホルモンは全身の臓器に作用するため、甲状腺ホルモンが不足することで様々な症状が引き起こされます。なんとなく元気がない、低体温、体重の増加、寒さに弱くなるなどの症状がみられ、尾が脱毛するラットテイルと呼ばれる典型的な皮膚症状がみられることもあります。血液検査を行うと、高脂血症、非再生性貧血、ALPの上昇などがみられます。
診断は、甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモンの測定や甲状腺の超音波検査などで行います。甲状腺ホルモンは様々な疾患や薬剤の投与によっても低下するため、診断には複数回の甲状腺ホルモンの測定が必要となることもあります。甲状腺機能低下症と診断された場合、レボチロキシンナトリウム製剤を投与します。治療を行うと、高脂血症、貧血、皮膚症状は数カ月以内に改善され、継続して投薬していれば通常予後は良好です。

体重の増加と脱毛がみられる
甲状腺機能低下症の犬
甲状腺機能低下症でみられる
ラットテイル

甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症は、甲状腺の過形成や、機能性甲状腺腫瘍などによって甲状腺ホルモンが過剰になることで起こる疾患です。特に高齢の猫では、犬に比べて甲状腺機能亢進症が多くみられます。甲状腺機能亢進症の猫では、体重の減少、多飲多尿、下痢や嘔吐などの消化器症状、攻撃的になるなどの行動の変化などがみられます。また、頻脈や呼吸困難、心肥大といった心疾患と同様の症状がみられることもあります。
診断は、血液中の甲状腺ホルモンの測定や甲状腺の超音波検査によって行います。甲状腺機能亢進症と診断された場合、抗甲状腺薬による内科的治療、または甲状腺の外科的切除によって治療を行います。どちらを選択するかは、腎不全の有無や内服薬への反応、内服薬の副作用の有無などによって決定します。また、ヨウ素を制限した処方食を食べさせるという新しい甲状腺機能亢進症の治療も行われています。

副腎皮質機能亢進症

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)は、副腎皮質からのグルココルチコイドが過剰になることで引き起こされる疾患で、犬に多くみられます。副腎皮質機能亢進症は、下垂体が副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を過剰分泌するもの(下垂体性:PDH)、副腎腫瘍などにより自律的にグルココルチコイドを過剰分泌するもの(副腎性:AT)に大きく分けられます。多飲多尿、脱毛や色素沈着などの皮膚症状、腹部膨満、呼吸促迫などが典型的な症状としてみられます。
診断は、症状や血液検査、血中のコルチゾールを測定するACTH刺激試験や低用量デキサメタゾン抑制試験、副腎の超音波検査などによって行います。PDHが疑われる場合には、頭部のCTやMRIによって下垂体の大きさを確認することもあります。
治療は、PDHではトリロスタンやミトタンを投与する内科的治療、放射線治療、外科手術を選択します。ATでは副腎を摘出する外科手術が第一選択の治療となりますが、転移などがある場合は内科的治療を行うこともあります。

副腎皮質機能亢進症で見られた腹部膨満
副腎皮質機能亢進症により脱毛している状態

甲状腺ホルモン・コチゾールの測定

当院では、IDEXXのスナップリーダーによって院内で甲状腺ホルモン、コルチゾールの測定を行っています。気になる症状があるときや検診を希望される場合、迅速に検査結果をお伝えすることができますのでご相談ください。